第15回(1999)
1999年
11 /11 木
会場:国立京都国際会館
第15回(1999) 京都賞受賞者
講演テーマ
人工物の科学と技術
講演要旨
人工の物を製造、使用し、また経験することは、現代生活の主要な活動です。人工物なくして先端技術の実現は不可能です。人工物というものは、その構成物や構造も含め、生産活動および使用や性能に直接結びついている、という考えがセラミック材料科学の先端技術についての私のビジョンです。セラミックの先端技術の用途が非常に多いので、このビジョンを一般 聴衆の方々によく理解して頂くには、いくつか過去の例を取り上げて紹介するのが適当かと思われます。
講演テーマ
私の幸運な半生
講演要旨
今日は自分自身のことをお話しするようにということでした。演題として、私の66回目の誕生日にロジャー・レヴェルがおこなった講演のタイトルを借用しました。 内陸国であるオーストリアに生まれた私は、まだ非常に若い頃にアメリカに行かせられました。祖父が創業に携わったニューヨークの会社で銀行業の修行をするためです。そこで鳴かず飛ばずの数年間を過ごした後、逃げるようにカリフォルニアに行き、カリフォルニア工科大学に何とかもぐりこみました。大学3年生のときにスクリップス海洋研究所で夏のアルバイトをして以来、(断続的にではありますが)ずっと同研究所にいます。 戦争が始まると、私は米国陸軍に入隊し、兵役を終えた後は陸海空軍共同上陸のための波浪条件の予測に携わるようになりました。戦後、私は海洋波浪が南半球の嵐の中で生まれ、アラスカで消えるまでの過程を追跡する遠征隊の隊長を務めました。ここから、さらに周期の長い波、津波、潮汐の研究へと進みました。また、潮汐力の研究から、地球のウォッブル(極運動)や、日の長さの変化の研究へと発展しました。 海底に穴を掘って、地球のマントルのサンプルを採取する計画にも関わりましたが、この計画は失敗に終わりました。また最近では、長距離の音響伝播を利用して海洋気候の変動を観測しています。この2つの活動は、あまり好ましくない意味で、世間から大いに注目されました。 私は米国政府、特に海軍関係の様々な役職を務める機会も得ました。また、カリフォルニア大学サンディエゴ校の一部として、スクリップス研究所内に地球物理学の研究所を創設しました。 振り返ってみますと、私が今のような仕事をしているのは、意識して努力したためではなく、機会が訪れる度に、それをつかんで生かすということを繰り返してきた結果 なのです。そうした過程で、ある程度の実績を上げることができたのは、非常に幸運だったと思います。
講演テーマ
舞踊と文明
講演要旨
踊るということは、何よりも伝えること、相手と結びつき、一体化して、自分の存在の深淵から語りかけることです。舞踊とは結合です。それは人間と人間との結合であり、人間と宇宙との結合であり、人間と神との結合なのです。口で語られる言葉は、幻想の領域を脱することはできません。言葉は、私たちがそれを理解したと思っても、私たちを欺くようなイメージを隠しもっているために、私たちをバベルの塔のように、どうどうめぐりの意味論の迷路へと誘い込んでしまうのです。人間は、長く話し合えば話し合うほど、完全に合意するより、争いになってしまうことの方が多いのです。 また、踊るということは、動物の言葉を話し、石ころとコミュニケートし、海の唄う歌や、そよぐ風を理解し、星と共に夜空を探索することであり、存在の極致に近づくことでもあります。踊ることは、私たちの人間という貧しい条件を完全に超越して、宇宙の深遠な営みに全身で参加することなのです。 どのような文明でも、その黎明期において、人間は裸足で地面を怒り狂ったように踏みつけていました。そこからリズムや音や空間や神に憑かれたような状態が生まれました。そしてそれが目に見えない力と結合し、舞踊が生まれたのです。