Witold Lutoslawski
第9回(1993)受賞
音楽
/ 作曲家
1913 - 1994
《葬送音楽》や《交響曲二番》などの代表作を通じ、新しい無調性音楽の手法と、独自の「偶然性」の手法を導入するなど、現代的な音楽表現の手法を開発することによって、20世紀音楽の巨匠として、第二次大戦後の音楽界に大きな影響を与えた現代ヨーロッパを代表する作曲家である。
[受賞当時の部門: 精神科学・表現芸術部門]
ヴィトルト・ルトスワフスキ氏は、新しい無調音楽の手法と、独自の「偶然性」の手法を導入するなど、現代的な音楽の表現方法をとり入れることによって、20世紀音楽の巨匠として、第二次大戦後の音楽界に大きな影響を与えた現代ヨーロッパを代表する作曲家である。
ルトスワフスキ氏は、祖国ポーランドにふりかかった厳しい状況の中で、音楽家としての感性を磨くとともに、自国の民族音楽を深く研究し、新しい音楽表現の方法を探求してきた。
ルトスワフスキ氏の作風は、新古典主義から始まるが、1941年の《パガニーニの主題による変奏曲》が初期の代表作である。1954年の《管弦楽のための協奏曲》は、調性にとらわれない、いわば「無調性の対位法」ともいうべき新しい語法を駆使し、民謡に動機を得ながら、民謡の次元からはるかに独自の境地に達している。
1956年の「雪解け」が契機になり、決定的な転機を刻んだのは、1958年の《葬送音楽》であった。一見12音音列に基づいているようで必ずしもそうでなく、独特の音程関係と和音で組み立てられており、曲全体の構造が実にみごとな均斉をみせている。また1961年の《ヴェネチアの遊戯》では、「コントロールされた偶然性」を導入し、この手法により、音の混乱が生ずるよりも、むしろ積極的な意味性が曲に宿される結果となった。
ルトスワフスキ氏はその後も《交響曲第2番》(1967)、《チェロ協奏曲》(1970)や、1980年代の《連鎖(チェーン)》シリーズなどの代表作を発表し続けて、時代的精神に対応しながら、積極的に新しい音楽表現の可能性を追及してきた。その音楽手法の先進性と深い精神性との共存のバランスは、聴衆に素晴らしい感銘を与えるとともに、音楽の新しい可能性を幅広く示すことによって、現代音楽家のよき指標ともなっている。
1960年代より現在まで世界各地で活躍を続けてきたヴィトルト・ルトスワフスキ氏は、ヨーロッパはもとより世界を代表する20世紀の作曲家として第9回京都賞精神科学・表現芸術部門の受賞者に最も相応しい。
プロフィールは受賞時のものです