Tamasaburo Bando V
第27回(2011)受賞
映画・演劇
/ 歌舞伎俳優
1950 -
歌舞伎の女形としてそれまでにない独特な世界を展開し、梨園の生まれではないにもかかわらず、立女形(たておやま)の地位を確立すると同時に、演劇・舞踊の分野の枠を越えた多彩な活動を国内外で繰り広げ、高い芸術的水準で多くの観客を魅了し続けている。
坂東玉三郎丈は、梨園の生まれではないにもかかわらず、実質的に現在の歌舞伎の立女形(たておやま)の位置にある。だがその活躍は歌舞伎にとどまらない。
歌舞伎においては、1969年に三島由紀夫の新作歌舞伎『椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)』の白縫姫(しらぬいひめ)に抜擢され、翌年『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)・御殿』のお三輪で注目されて以来、『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』の政岡、『妹背山婦女庭訓・山の段』の定高(さだか)、『仮名手本忠臣蔵』の戸無瀬(となせ)において立女形の地位を確立し、また鶴屋南北の『桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)』や『於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)』で、それまでにない独特な世界を展開して見せた。それと同時に、1975年には新派に単身参加して初代水谷八重子と泉鏡花の『稽古扇(けいこおうぎ)』を共演、翌年にはシェイクスピアの『マクベス』のマクベス夫人を演じ、1981年にベンジャミン・ブリテンが能の『隅田川』をベースにした『カーリュー・リヴァ-』に出演するなど、他のジャンルにも積極的に参加する活動も続けた。1984年、メトロポリタン歌劇場の開場100周年記念ガラ公演に招待され、シャンソンのイヴ・モンタン、バレエのルドルフ・ヌレエフやマーゴ・フォンテーン、オペラのプラシド・ドミンゴらに伍して、日本の代表として『鷺娘』を披露したことにより、世界的に広く注目されるようになった。
それ以後、1988年に文学座が杉村春子主演で初演した有吉佐和子の『ふるあめりかに袖はぬらさじ』に出演、1997年に木下順二の『夕鶴』で主役を演じ、2007年には自身の監修・演出による歌舞伎座初の1ヶ月の泉鏡花尽くしの公演を実現させる一方、1988年にモーリス・ベジャール振付の『ベジャール・バレエ・ガラ』に参加、翌年アンジェイ・ワイダ脚本・演出の『ナスターシャ』に主演し、1998年、バレエのミハイル・バリシニコフとジョイント公演、2008年には中国江蘇省蘇州昆劇院(こんげきいん)に単身参加して北京での昆劇の『牡丹亭』に主演するなど、国際的にも広く活躍した。また映画の監督・出演や、和太鼓グループ・鼓童との共演も続けている。歌舞伎の女形(おんながた)を立脚点に、演劇・舞踊の分野の枠を越えてこれほど多彩な世界を展開し、芸術的にも高い水準で多くの観客を魅了し続けている俳優は、他に例を見ない。
以上の理由によって、坂東玉三郎丈に思想・芸術部門における第27回(2011)京都賞を贈呈する。
プロフィールは受賞時のものです
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