Robert Heath Dennard
第29回(2013)受賞
エレクトロニクス
/ 電子工学者
1932 - 2024
IBMトーマス・J・ワトソン研究所 IBMフェロー
メモリ用集積回路として広く使われている「半導体ダイナミックメモリ(DRAM:Dynamic Random Access Memory)」の基本構造を発明し、デジタル情報の記憶容量や処理能力を格段に高め、情報・通信技術の飛躍的発展を可能とした。また、集積回路に不可欠なMOS型電界効果トランジスタを微細化するための設計指針を、同僚の協力を得て提案し、DRAMを含む集積回路全般の驚異的進展にも貢献した。
ロバート・ヒース・デナード博士は、メモリ用集積回路として広く使われている「半導体ダイナミックメモリ」(DRAM:Dynamic Random Access Memory)の基本構造を発明し、デジタル情報の記憶容量や処理能力を格段に高め、情報・通信技術の飛躍的発展を可能とした。また、集積回路に不可欠なMOS型電界効果トランジスタを微細化するための設計指針を、同僚の協力を得て提案し、DRAMを含む集積回路全般の驚異的な進展にも貢献した。
デナード博士は、コンピュータ用のメモリ集積回路の研究に早くから取り組み、1967年、ひとつの基本構造を発明した。このメモリは、記憶の基本単位(セル)が、一個のMOS型電界効果トランジスタ(以下、トランジスタと略す)と一個のコンデンサから成り、コンデンサに蓄積される電荷の有無で、“1”と“0”を記憶している。このメモリでは、多数の記憶セルを碁盤目状に置き、そこに縦と横方向に配線を設け、横の配線(ワード線)と縦の配線(ビット線)の選択により、任意セルに接続できるため、ランダムアクセスメモリ(RAM)と呼ばれている。
各セルのコンデンサに対し、トランジスタを経由して、ビット線から電荷を流入させるか否かで、“1”か“0”を書き込むが、蓄積された電荷は徐々に抜けるため、定期的に充電する必要がある。このため、ダイナミックRAM(DRAM)と呼ばれるようになった。“1”か“0”かの読み出しは、蓄積電荷の有無に伴うビット線の電位の僅かな違いを、感度よく検出して行う。
1970年、各セルに3個のトランジスタを用いた1kビットDRAMが初めて製品化されたが、デナ―ド博士の発明した1トランジスタ構造を持つDRAMは、1973年に製品化され、それ以降は全てのDRAMに1トランジスタ構造が使われている。
デナード博士は、さらに、電界効果トランジスタを微細化した時の電気特性の変化を同僚とともに検討し、微細化に有用な設計指針(スケーリング則)を提案した。これにより、集積回路内の素子の微細化が進み、DRAMの容量が当初の百万倍以上に高まるとともに、マイクロプロセッサの高速化や高性能化なども可能となった。
デナード博士のこれらの業績は、集積回路技術に驚異的発展をもたらし、情報・通信機器の飛躍的な進歩に不可欠な貢献をなした。
以上の理由によって、ロバート・ヒース・デナード博士に先端技術部門における第29回(2013)京都賞を贈呈する。
プロフィールは受賞時のものです