Olivier Messiaen
第1回(1985)受賞
音楽
/ 作曲家
1908 - 1992
現代音楽の巨匠。カトリシズムに現代的表現を与えようと努め、独自の技法と体系を生み出した。「鳥のカタログ」「わが主イエス・キリストの変容」などの代表作がある。
[受賞当時の部門: 精神科学・表現芸術部門]
オリヴィエ・メシアン氏は、フランスが生んだ20世紀最大の作曲家である。パリ音楽院で作曲技法等を学び、オルガン奏者となったあと、多彩な作曲活動を展開して今日にいたっている。『わが音楽語法』などの理論的著作もあり、教育者としても、ピエール・ブーレーズ、シュトックハウゼンなど一級の弟子を生み出している。
メシアン氏の音楽は、基本的にはカトリック信仰と結びついており、カトリシズムに現代的表現を与えようと努めている。いわば積極的にカトリシズムに依存することによって、音楽の思想的な普遍化をはかろうとしているといってもよい。音楽の普遍化のために、メシアン氏は独自の技法の体系を編み出してみせた。彼は、カトリシズムのほんとうの思想を表現するにふさわしい汎神論的な技法を、新しく編み出そうと試みてみせている。すなわち、伝統的なカトリック音楽の手法を追う立場を否定し、いわば大胆な非古典的な立場を選んでみせた。
メシアン氏の関心事のひとつは、リズムである。時空のわくを超えて、ありとあらゆるリズムの類型を求めたいという意欲が、メシアン氏の音楽の根幹をなしている。そして、そのリズム感覚を理論的に推し進めることによって、「付加された音価」あるいは「不可逆的なリズム」などの独自の理論を生み出すことになった。
メシアン氏の音楽のもうひとつの特徴は、ユニークな旋律にみられる。彼は動機を有機的に展開させる古典的手法をとっておらず、一見すると、機械的反復が多い。しかし、ある種のパターンの反復によって、独特の秩序感が与えられる。そして、メシアン氏の音楽は独特の美感をもっている。
メシアン氏の作品は、交響的作品にはじまり、室内楽曲、ピアノ曲、オルガン曲、オンド・マルトノ曲そして声楽曲と、じつに多岐におよんでいる。そのほとんどすべての作品が、それぞれちがった意味で問題作である。
いずれにしても、メシアン氏は、20世紀音楽のさまざまな潮流のなかで独自の地歩を確立した巨大な音楽家であり、現存する作曲家としては、他に抜きん出た存在として高い評価を受けている。ラインランド芸術大賞、エラスムス賞などすでに国際的にもさまざまな顕彰を受けており、いわば究極的な顕彰として第1回京都賞の授賞にふさわしい人物であると判断できる。
プロフィールは受賞時のものです