Michael Szwarc
第7回(1991)受賞
材料科学
/ 高分子化学者
1909 - 2000
南カリフォルニア大学 教授
「リビング重合」の発見によって、高分子を先端技術に不可欠な機能材料として発展させる大きな道筋を拓くとともに、高分子化学者のみならず多くの研究者・技術者に、高分子材料の設計と合成のための画期的な方法を与え、材料科学における高分子材料の研究開発と発展に多大な貢献をした。
シュワルツ博士は、高分子化学の分野において多方面にわたり、優れた研究を展開し、1956年、ナトリウム塩を開始剤とするスチレンのアニオン重合において、反応条件の制御により、重合終了後も末端が活性を持つことを見出し「リビング重合」を確立した。従来の重合法では、高分子の成長反応以外にも種々の副反応が起こるため、精密な合成が不可能で、先端材料としての利用の障害になっていたが、この発見は高分子を先端的機能材料として発展させる大きな道筋を開いたものである。
「リビング重合」では、分子量の揃った高分子の合成が可能であるため、新しい高分子材料の合成への寄与と波及効果は、計り知れないものがある。例えば、分子量測定の標準となる高分子試料の提供、また、半導体集積回路のICやLSI製造用のフォトレジストに必要な高分解能レジスト材料として活用され、現在も大きな注目を集めている。
シュワルツ博士はまた、活性を保った高分子、すなわち「リビングポリマー」の末端に、異なる種類のモノマーを結合させ、「ブロックポリマー」を製造する基礎技術を確立させた。「ブロックポリマー」は、従来のランダム重合法やブレンド法では合成が不可能な高分子材料だが、博士のこの技術により天然ゴムと異なる熱可塑性エラストマーなどの、種々の新しい機能性高分子材料の製造が可能になった。
さらに、「リビングポリマー」に官能基を持つ適当な化合物を反応させると、末端官能性高分子となり、特殊塗料や電気絶縁剤などに用いられている液状ゴムとして、多くの分野で利用されている。
以上のごとく、「リビング重合」の発見に始まるシュワルツ博士の研究業績は、高分子科学者だけでなく、他の多くの分野の研究者と技術者に、先端技術に要求される高分子材料の設計と合成のための画期的な方法を与えたものである。シュワルツ博士は、第7回京都賞先端技術部門の受賞者として、最もふさわしい。
プロフィールは受賞時のものです