Maurice Vincent Wilkes
第8回(1992)受賞
情報科学
/ コンピュータ技術者
1913 - 2010
ケンブリッジ大学 名誉教授
現在のコンピュータの原型で、世界最初に稼働したプログラム記憶式計算機EDSACの開発責任者を務めるとともに、高機能コンピュータ実現のための独創的な方式や機構を数多く考案し、その研究開発と実用化に多大な貢献をした。
モーリス・ヴィンセント・ウィルクス博士は現在のコンピューターの原型である「プログラム記憶式コンピューター」を世界で最初に開発するとともに、今日のコンピューターに採用されている主要な演算制御方式を数多く考案し、コンピューターの開発と実用化に多大の貢献をした偉大なコンピューター技術者である。
ウィルクス博士は、ジョン・フォン・ノイマン博士のグループの提案に着目し、その実現に必要な超音波遅延線記憶装置や、プログラム記憶方式制御機構などを考案し、1949年世界に先駆けて実用レベルのプログラム記憶式コンピューターEDSACを開発した。このコンピューターの技術は、1951年LEO(Lyons Electronic Office)と呼ばれる最初の商用コンピューターの開発に活かされるとともに、プログラミング手法の基礎、サブルーチンの概念、プログラム・ローディング法、数値計算法など数々の特筆すべき研究業績を生み、プログラム記憶式コンピューターが備える画期的な威力を実証した。
また博士は、高度な機能を持つコンピューターを実現するために必須な方式や機構(アーキテクチャー)についても、多くの独創的な研究を行ってきた。それらは、マイクロプログラミング方式やマルチプログラミング処理方式、オペレーティングシステムの原型、時分割システム、構内ネットワーク(LAN)、記憶保護方式などに関する有用な考案で、特に、マイクロプログラミング方式の提案は、大規模集積化(VLSI)高性能コンピューターの実現に不可欠なものであると同時に、コンピューターに問題適応能力を与える有用な手法を提供し、新しいコンピューター・パラダイムの出現に寄与する技術として、極めて高く評価されている。これらの数多くの研究成果は七冊の著書ならびに130編以上の論文としても世に示されている。
以上のような輝かしい業績により、モーリス・ヴィンセント・ウィルクス博士は第8回京都賞先端技術部門の受賞者に最もふさわしい。
プロフィールは受賞時のものです