Masatoshi Shima
第13回(1997)受賞
エレクトロニクス
/ 半導体技術者
1943 -
有限会社 嶋 正利 代表
4氏のグループは世界初のマイクロプロセッサ4004を開発し、広範な機能を備えたマイクロコンピュータが少数の半導体チップで構成できることを示すことにより、マイクロプロセッサを基盤として産業および民生機器のエレクトロニクス化の道を拓き、新産業の創成と現代社会に計り知れない貢献をした。
フェデリコ・ファジン博士、マーシャン・エドワード・ホフJr.博士、スタンレー・メイザー氏、嶋正利博士達4人のグループは、共同で1971年に世界最初の汎用マイクロプロセッサ4004を開発し、現代社会に絶大なインパクトを与え、世界の産業構造と社会構造に大きな変革をもたらした。
4氏が開発したマイクロプロセッサ4004は、3mm×4mmのシリコンチップ一枚の上に2300個のトランジスタを集積し、その能力は初期のコンピュータの時代には、一つの部屋を占有する程の大きさであった中央処理装置(CPU)の機能に匹敵するほどの革新的なものであった。
このマイクロプロセッサは、データや命令を収納するメモリーおよび入出力用のレジスタなどと組み合わせることにより、マイクロコンピュータというそれまでなかったシステムを可能とし、その構成要素やプログラムを変えることによって、数字・文字・画像の処理やシステムの制御など、多様な用途に効率よく対応するという全く新しい技術の流れを作り出す役割を果たした。トランジスタや集積回路の発明によってエレクトロニクスは顕著な技術革新をもたらしてきたが、マイクロプロセッサ4004の出現によってプログラムが可能になる電子部品の時代が始まり、さらに飛躍的な発展をすることとなったのである。この結果、システムを構築する技術もハードウエアとソフトウエアを有機的に活用する方式に移行し、いわゆる第二次産業革命の引き金となった。このマイクロプロセッサ4004の登場以降、今日まで約四半世紀が経過し、この間データ幅は4ビットから8ビットへ、さらに16ビットから32ビット、64ビットへと発展、その計算能力と処理能力は驚異的な向上を見せている。マイクロプロセッサ4004には、この発展を遂げつつある技術の基本概念が全て含まれていたといえる。
今日、マイクロプロセッサはパーソナルコンピュータをはじめとして、家電製品から自動車、通信機器、医療機器に組み込まれ、我々の日常生活の隅々まで浸透しており、さらに工作機械などの産業用機器にも幅広く普及している。およそ人間の発明したもので、マイクロプロセッサの開発と発展ほど短期間のうちに大きな影響を与えたものは他に見あたらない。こうした進展は、マイクロプロセッサ4004の誕生が契機となって創り出されたものであり、日米伊4名の技術者の成果なくしてもたらし得なかったものである。よって、ファジン博士、ホフ博士、メイザー氏、及び嶋博士に先端技術部門の第13回京都賞を贈呈する。
プロフィールは受賞時のものです