John Neumeier
第31回(2015)受賞
映画・演劇
/ 振付家
1939 -
ハンブルク·バレエ団 総裁·芸術監督
伝統的なバレエの動きをベースとしながら、身体の持つ表現力を最大限に引き出し、人間心理を巧みに表現した振付によって舞踊界をリードし続けている。20 世紀以降のバレエ史において 2 つに分かれて発展してきた劇的バレエと抽象バレエの本質を統合し、舞踊という芸術を一段の高みへと引き上げた。
ジョン・ノイマイヤー氏は、伝統的なバレエの動きをベースにしながら身体の持つ表現力を最大限に引き出し、それによって人間心理を深く探求している振付家である。
1942年にアメリカに生まれたノイマイヤー氏は文学を修めるかたわら舞踊を学び、1963年にドイツのシュツットガルト・バレエ団に入団した。演劇的バレエの主要な発信地であった同団で早くから創作の気風に触れ、才能を開花させる。1973年にはハンブルク・バレエ団の芸術監督に就任、以来40年以上にわたり多幕物の新作を精力的に発表し、バレエ界をリードし続けている。
氏の作品群は、大きく3つに分けられる。すなわち、『幻想―「白鳥の湖」のように』に代表される「古典バレエの現代的な読み直し」、『椿姫』をはじめとする「文学のバレエ化」、『マーラー交響曲第3番』他の「名作音楽を用いた抽象作品」である。身体の離れ業を内面表現へと転化させ、元になる物語や音楽の本質的な味わいを引き出す氏の手腕は比類が無く、劇中劇をはじめとする計算され尽くした演出手法や卓抜な照明術が示す通り、その創作へのアプローチは極めて知的である。一方で、男女の愛、登場人物への共感、人類愛と、様々なレベルで熱い感情が作品の底流をなしてもおり、それがまた、氏の作品を各国の一流バレエ団やダンサーがレパートリーに熱望してやまない理由でもある。日本文化にも関心が深く、東京バレエ団に委嘱された『月に寄せる七つの俳句』や『時節の色』では、日本的繊細さや叙情性と、それを取り巻く折々の季節感の変化をみごとに表現している。
20世紀以降のバレエは、19世紀のロマン主義的な妖精譚とは一線を画すリアルな人間造形を中心に据えた「身体の演劇」と、楽曲に緊密に対応した「観る音楽」の2つに分かれて発展してきたが、「身体の動きによる精神の表出」という舞踊ならではの営みに対しきわめて自覚的なノイマイヤー氏は、長年にわたる活動の過程でしだいに両者の本質を統合し、バレエという芸術全体を一段の高みへと引き上げたというべきだろう。その作品を踊ることでダンサーが成長し、その名演が観客を含めたバレエ界全体を成熟させるだけでなく、次世代の振付家に対しても、創作の出発点としての深い思索を促さずにはおかない。今後もノイマイヤー氏の影響力は多大であるに違いない。
以上の理由によって、ジョン・ノイマイヤー氏に思想・芸術部門における第31回(2015)京都賞を贈呈する。
プロフィールは受賞時のものです
ノイマイヤー×芭蕉×バッハ:バレエ『月に寄せる七つの俳句』
3年に一度開かれている「世界バレエフェスティバル」が、8月1日より東京文化会館ではじまりました。
ノイマイヤー、2023年までハンブルク・バレエ団率いる
2月の京都でのハンブルク・バレエ団による「特別ワークショップ」、「ガラ公演<ジョン・ノイマイヤーの世界>」から1か月。ドイツ・ハンブルクより、うれしい知らせがとどきました。
ハンブルク・バレエ団プリンシパルによる特別レッスン
2018年2月、東京と京都で来日公演を行うハンブルク・バレエ団。総裁・芸術監督で世界的な振付家ジョン・ノイマイヤー氏は、2015年に京都賞を受賞されました。このたび稲盛財団は、2月17日にロームシアター京都で開催される「ガラ公演<ジョン・ノイマイヤーの世界>」を特別協賛させていただきます。