Joan Jonas
第34回(2018)受賞
美術(絵画・彫刻・工芸・建築・写真・デザイン等)
/ 美術家
1936 -
マサチューセッツ工科大学 名誉教授
パフォーマンスとメディア・アートのラディカリズム―ジョーン・ジョナスとその変遷あるいは継承―
2018年
11 /14 水
19:00~(開場:18:30)
会場:ロームシアター京都 ノースホール
パフォーマンスとビデオアートを融合させた新しい表現形式を創始し、進化・洗練させることで現代美術の最先端を走り続けてきた。観る者に多様な解釈を許す迷宮的な作品によって、1960年代アヴァンギャルドの遺産をポストモダン芸術の枠組みへ発展的に継承し、後続世代へ多大な影響を与えてきた。
ジョーン・ジョナス氏は1970年代初頭にパフォーマンスとビデオを融合させた新しい表現形式を創始し、この表現の進化と洗練に尽力したことで、現代のパフォーマンスとビデオアートの領域における先駆者の一人として、また現在もパフォーマンスと新しいデジタルメディアとの関係を探求し続けるアクティブな芸術家として、高い評価と尊敬を集めている。
ジョナス氏は大学で美術史と彫刻を学んだ後、1960年代後半のニューヨークで多くの作家たちと交流、特に後年ポストモダン・ダンスの神話的存在となるトリシャ・ブラウンやルシンダ・チャイルズのワークショップに参加したことが、身体表現を重視する独自の作品を生み出す契機となった。1970年以後のジョナス氏の作品は、身体表現と生成プロセスの重視、異質な要素を受け入れ、ストーリーを持たないノンリニア・ストラクチャー(非線形構造)が大きな特徴となる。ジョン・ケージなどの1960年代アヴァンギャルドの最良の遺産を、加算的で多元的価値観のポストモダン芸術の枠組みへ発展的に継承し後続世代に伝えてきたことも、ジョナス氏の長年にわたる大きな業績である。
ビデオアートの歴史における古典として評価の高いVertical Roll(1972)は、現前のパフォーマンスのビデオ映像を、舞台上のTVモニターにリアルタイムで映すもので、ライブパフォーマンスと映像の混在、鑑賞者の視線とカメラ角のズレによる時間と空間の齟齬、そして電気的なシステムの遅延の可能性をも導入した革命的な構造を持つものであり、発表後多くの作家たちから研究と参照の対象とされた。2000年代の代表作Reanimation(2010/2012/2013)は、アイスランドの自然や神話、ドローイング、音響、過去の自作の映像断片などが織りなす迷宮的で、さまざまな要素が重層的に加算されていく作品であった。ジョナス氏の作品は鑑賞者に単一な解釈を求めるものではなく、むしろ鑑賞者が主体的に作品を解読し、誤読を含む多様な解釈を獲得することを促す、極めて今日的な物語構造を内包している。
またジョナス氏は1998年から今日までマサチューセッツ工科大学で教鞭を執り、すぐれた人格を持つ教育者としても尊敬を集め、後に続く作家たちに計り知れない影響を与え続けている。
以上の理由によって、ジョーン・ジョナス氏に思想・芸術部門における第34回(2018)京都賞を贈呈する
プロフィールは受賞時のものです
京都賞再耕 #08 ジョーン・ジョナス作品を通して世界を翻訳し、自分自身の表現言語で語りかける
科学や技術、思想・芸術の分野に大きく貢献した方々に贈られる日本発の国際賞「京都賞」。受賞者の方々は、道を究めるために人一倍の努力を重ね、その業績によって世界の文明、科学、精神的深化のために大いなる貢献をしてきた人たちです...
ジョーン・ジョナス展『Simple Things』、東京で。12/26まで
東京・六本木のワコウ・ワークス・オブ・アートでは、ことし京都を受賞した美術家ジョーン・ジョナスの個展『Simple Things』が、12月26日まで開かれています。
2019年、現代美術の巨匠ジョナスが京都で新たな歴史を刻む
1970年代にパフォーマンスとニューメディアの融合により新たな表現を確立した美術家ジョーン・ジョナス氏。彼女の第34回(2018)京都賞受賞を記念して、稲盛財団では2019年12月、彼女の日本におけるイベントとしては過去最大規模となる<単独パフォーマンス公演>と<展覧会>を、京都で開催します。