Jan Hendrik Oort

第3回(1987)受賞

基礎科学部門

地球科学・宇宙科学

ヤン・ヘンドリック・オールト

/  天文学者

1900 - 1992

ライデン大学 名誉教授

記念講演会

地平線

1987年

11 /11

会場:国立京都国際会館

ワークショップ

宇宙における構造の起源

1987年

11 /12

10:30~17:00

会場:国立京都国際会館

業績ダイジェスト

銀河の構造及びその力学的特性の解明による天文学への多大な貢献

水素原子の発する波長21cm電波スペクトル線の観測によって、銀河の構造と力学的特性を解明し、銀河回転の基本パラメーターの決定、および銀河の渦状構造の全貌と中心位置を明らかにした天文学、天体物理学の第一人者である。

贈賞理由

銀河の構造及びその力学的特性の解明による天文学への多大な貢献 ヤン・ヘンドリック・オールト博士は、1987年の京都賞(基礎科学部門)を、長年にわたる天文学および天体物理学への貢献、特に我が銀河の構造と力学的特性の解明によって受賞することになった。

博士は天の川が円盤状の回転する星系で、太陽はその中心から半径の約3分の2の距離に位置することを見いだした。1920年代の後半、博士は最初に星の速度の光学観測からこの構造を導き、1950年代に彼の弟子たちと共に水素の21cmの線の観測から構造を定量化した。銀河回転は「オールト定数」と呼ばれる二つのパラメーターで代表され、銀河円盤に垂直な運動は太陽近傍における質量面密度の最大許容値である「オールト極限」によって支配される。

天文学への重要な貢献の一つに電波天文学の開発がある。これらを用いて、我が銀河に落下する高速水素雲、銀河中心における膨張ガス、系外銀河の興味ある性質等を見いだした。また電波や光の観測に基づいて、銀河中心までの距離を導いた。

オールト博士は太陽系の研究においても有名である。1950年、太陽から10万天文単位の彼方に「オールト雲」と呼ばれる彗星の巣があり、近傍を通る星の擾乱を受けてその雲から彗星が供給されることを示した。

博士は超新星の研究にも功績があった。最も顕著な発見の一つに1054年の超新星の残骸である「かに星雲」の光の偏光がある。これによって、電磁放射は高速電子が磁場中で放射するシンクロトロン放射であるという理論的予言が証明された。

これらの研究を通じて、またライデン大学教授およびライデン天文台長として現在、世界に広く指導的役割を演じている多くの天文学者と天体物理学者を育てた。博士自身はそう思ってないかもしれないが、世界にはもっと多くの人々がオールト博士の弟子と自称している。世界中の天文学者と天体物理学者は、博士の科学的研究と研究活動の組織の恩恵を受けており、この年齢に至ってなお研究を続けている博士の情熱に深く敬服している。

博士の学問上の功績は、いくつかの国際的な賞、いくつかのアカデミーの会員、名誉博士号等によって広く認められている。

プロフィール

略歴
1900年
オランダ・フラネカーに生まれる
1921年
フローニンゲン大学卒業
1921
フローニンゲン大学助手
1922
イエール大学天文台助手
1924
ライデン天文台観測員
1926年
フローニンゲン大学博士号取得
1935
ライデン大学天文学教授
1945
ライデン天文台天文台長
1958
国際天文学協会会長
1970年
ライデン大学名誉教授
主な受賞・栄誉
1942年
太平洋天文学会ブルース賞
1946年
英国王立天文学会金賞
1966年
コロンビア大学ヴェトルスン賞
1984年
バルザン賞
主な論文・著書
1928年
「太陽近傍での銀河系の動力学」
1941年
「銀河系の中心部の構造について」
1950年
「太陽系を取り巻く彗星雲の構造とその起源について」
1954年
「水素原子波長21cm電波観測から導かれる銀河系の渦状構造」(H. C. バン・デ・フルスト、C. A. ミューラーとの共著)
1956年
「かに星雲の偏光と組成」(Th. ワルラーフェンとの共著)
1966年
「高緯度・高速水素雲」
1981年
「準星の超銀河団内分布の徴候」

プロフィールは受賞時のものです