Jack St. Clair Kilby
第9回(1993)受賞
エレクトロニクス
/ 半導体技術者
1923 - 2005
テキサスインスツルメンツ社 顧問
今日の最先端技術であるLSI、超LSIの基盤となったモノリシック半導体集積回路の基本的概念を世界で初めて提案、実証し、集積回路技術の進歩発展の基礎を創るとともに、その初期における研究開発と実用化に大きく寄与し、マイクロエレクトロニクスの発展に多大な貢献をした。
ジャック・セントクレア・キルビー博士は、今日の最先端技術であるLSI、超LSIの基盤となったモノリシック半導体集積回路の基本的概念を世界で初めて提案し、集積回路技術の発展の基礎を創るとともに、その初期における研究開発と実用化に大きく寄与し、マイクロエレクトロニクスの発展に多大な貢献をした偉大な技術者である。
1940年代後半のトランジスタの発明によって、それまで全盛であった真空管のような「真空の中の電子」を使う技術から脱皮し、「結晶の中の電子」を使う現代エレクトロニクスの幕開けとなった。
キルビー博士は、1958年、すべての部品を同一の半導体に作り込むという、モノリシック化の着想を得て、一つの半導体基板の中にトランジスタ、抵抗、キャパシタをすべて作り込み、電子回路を構成するという概念を提唱し、これを実証した。
博士はさらに1959年、メサトランジスタ、バルク抵抗、拡散キャパシタからなるフリップフロップ集積回路を試作してその動作を確認した。博士は特殊計算機システム開発チームのリーダーとしてこの集積回路技術の実用化を率先して推進し、世界で最初の計算機用集積回路を実用化し、画期的なシステムを完成させた。
また、この技術を産業、民生分野に応用すべく、現在の電卓の先駆的モデルである小型カリキュレータの試作を行った。このように博士は、半導体を用いた集積回路が極めて広範な分野に適用できることを多くの応用例から実証し、大きなインパクトを与えたのである。これは工学的に極めて重要かつ画期的な仕事であった。
今日のマイクロエレクトロニクスの発展は、多くの要素技術の発明と多くの技術者の努力によって実現されてきたことは事実である。しかし、キルビー博士が開発した半導体集積回路技術がその後の集積回路技術の研究開発に大きなインパクトを与え、現代マイクロエレクトロニクス産業の起源となったLSI、VLSI、さらにULSIへの発展の道を切り拓いたのである。
以上のような輝かしい業績により、ジャック・セントクレア・キルビー博士は第9回京都賞先端技術部門の受賞者に最も相応しい。
プロフィールは受賞時のものです