Izrail Moiseevich Gelfand
第5回(1989)受賞
数理科学(純粋数学を含む)
/ 数学者
1913 - 2009
モスクワ大学 教授
数理科学、とりわけ今世紀に飛躍的発展を遂げ、数学の様々な側面のみならず量子力学や素粒子論などの物理学に不可欠な数学的概念の供給源となった関数解析学の分野において、長期的展望に立つ先駆的研究を行い、創造性溢れる研究途上で多くの俊秀を育成するなど、数理科学の発展に多大な貢献をした現代最高峰の数学者である。
ゲルファント博士は、数理科学、とりわけ関数解析学の分野において、長期的展望に立つ先駆的研究を行うとともに広範な領域に及び数々の顕著な成果を挙げ、数理科学の発展に大きく貢献した。また、創造性溢れる研究途上で、教育や共同研究を通じて多くの優秀な研究者を育成し、学界の発展に多大の貢献をなした。
関数解析学は、関数のなす無限次元空間を解析的かつ代数的に取り扱う数学の分野であるが、今世紀に飛躍的発展を遂げた数理科学の中でもとりわけ著しい発展を遂げ、数学の様々な側面に大きな影響を及ぼしたのみならず、量子力学や素粒子論等の物理学に不可欠な数学的概念の供給源となった。この飛躍的発展の原動力となったのがゲルファント博士の諸研究である。
可換ノルム環に関する1983年の学位論文やヒルベルト空間の自己線形作用素環となる非可換位相環の研究は、関数解析学のその後の発展を決定づけた基本的成果であり、代数幾何学等の発展にも影響を及ぼし、物理学おける基本的手法をも提供した。
自然界の対称性を記述する群は、数学や物理学における基本的な研究対象である。群のユニタリー表現に関する博士の諸研究も関数解析学における輝かしい成果である。教授の研究対象は、局所コンパクト群、半単純リー群、さらには無限次元群にまで及び、表現論や物理学の発展に重大な寄与をしたのみならず、数論や幾何学の発展にも多大な影響を及ぼした。
また数名の共同研究者とともに著した超関数論全6巻は、微分方程式論、表現論、等質空間論、積分幾何学、保型関数論、確率過程論等をも含む有機的結合体であり、様々な分野の研究者にとって知識の宝庫となっている。
460編以上の論文や著書に発表された博士の業績はこの他にも、逆スペクトル理論、楕円型作用素の指数と位相不変性、等質空間上の測地流、無限次元リー環のコホモロジー、等質空間上の微分作用素、積分幾何学、組合わせ幾何学、数値解析等に関する重要な研究成果を含み、教授の研究領域の広さはまさに驚異的である。
博士は、その鋭い洞察力によって数理科学の諸分野の間に予想外の相互関係を発見し、まったく新しい研究の展望を提供した。
また、博士が40年以上にわたってモスクワ大学で主催しているセミナーは、非常に創造性に溢れ、多くのそうそうたる数学者を輩出している。
博士は現在もなお超幾何関数等の独創的研究を続行中であり、その豊かな発想と鋭い洞察力は、数理科学全般の発展に今後とも計り知れない影響力を持ち続けるものと期待されている。
プロフィールは受賞時のものです