Hirotugu Akaike

第22回(2006)受賞

基礎科学部門

数理科学(純粋数学を含む)

赤池 弘次

/  統計数理学者

1927 - 2009

統計数理研究所名誉教授

記念講演会

物の動きを読む数理—情報量規準AIC導入の歴史—

2006年

11 /11

会場:国立京都国際会館

ワークショップ

モデリング・予測・知識発見 - 情報量規準が切り拓いた世界 -

2006年

11 /12

13:00~17:20

会場:国立京都国際会館

業績ダイジェスト

情報量規準AICの提唱による統計科学・モデリングへの多大な貢献

情報数理の基礎概念に基づく、実用性と汎用性の両方を兼ね備えた、統計モデル選択のための規準 Akaike Information Criterion(AIC) の提唱により、データの世界とモデルの世界を結びつける新しいパラダイムを打ち立て、情報・統計科学への多大な貢献をした。

[受賞当時の対象分野: 数理科学]

贈賞理由

赤池弘次博士は、1970年代初頭、情報数理の基礎概念に基づく、実用性と汎用性の両方を兼ね備えた、統計モデル選択のための規準Akaike Information Criterion(AIC)を提唱し、統計学でのデータの世界とモデルの世界を結びつける新しいパラダイムを打ち立て、情報・統計科学への多大な貢献を行った。

赤池博士は、蚕糸過程の解析、セメントキルンの制御、火力発電所の制御などの実地研究を通して、情報数理の基礎概念に基づいてAICを導出し、モデル選択という知的情報処理に共通の重要な問題に対して画期的な解答を与えた。AICは、モデルのデータに対する適合度とシンプルさという相反する二つの要請を同時に満たすモデル選択を可能にする。このような性質をもつAICは、現在、数学・統計学の分野以外にも、医学・疫学、生物学、制御工学、経済学、環境学、地球物理学、社会科学などの広範な分野においてモデル選択の指針として広く実用に供されている。

赤池博士は、種々の工業プラントの統計的制御の実用化、多変量時系列解析における時間領域でのモデリング手法の開発、時系列解析ソフトウェアTIMSACの開発・普及等多くの業績を挙げている。さらに、赤池博士は、1980年代初頭にいち早くベイズモデルの重要性を見抜き、その情報・統計科学の立場からの実用化に貢献した。現在の知的情報処理諸分野でのベイズモデルの隆盛を観る時、その慧眼には驚きを禁じ得ない。

情報処理技術の飛躍的な発展により、現在、我々は過去とは比較にならない大量のデータを入手し処理することができる。したがってそこから知識と情報を抽出し、あるいは我々を脅かすリスクを予測し、制御することは、人類社会の生存・発展にとって非常に重要になっている。このような時代認識に立つ時、赤池博士の提唱したAIC、それに基づくモデリングの方法論は、人類の財産として、今後益々重要な役割を果たし続けることは間違いなく、博士の業績は高く評価されるものである。

以上の理由によって、赤池弘次博士に基礎科学部門における第22回(2006)京都賞を贈呈する。

プロフィール

略歴
1927年
静岡県富士宮市生まれ
1952年
東京大学理学部数学科卒業
1952年
統計数理研究所入所
1961年
理学博士(東京大学)
1962年
統計数理研究所第一研究部第二研究室長
1973年
統計数理研究所第五研究部長
1985年
統計数理研究所予測制御研究系研究主幹
1986年
統計数理研究所所長日本学術会議会員(1988-1991年)総合研究大学院大学数物科学研究科教授(1988-1994年)
1994年
統計数理研究所名誉教授
1994年
総合研究大学院大学名誉教授
主な受賞・栄誉
1972年
石川賞、(財)日本科学技術連盟
1980年
大河内記念技術賞、大河内記念会
1989年
1988年度朝日賞、朝日新聞
1989年
紫綬褒章(日本)
1996年
第一回日本統計学会賞、日本統計学会
主な論文
1969年
Fitting autoregressive models for prediction, Ann.Inst.Statist.Math. 21: 243-247, 1969.
1970年
Statistical prediction identification, Ann.Inst.Statist.Math. 22: 203-217, 1970.
1973年
Information theory and an extension of the maximum likelihood principle, Proc.2nd International Symposium on Information Theory, Petrov, B. N and Csaki, F. eds., Akademiai Kiado, Budapest, 267-281, 1973.
1974年
A new look at the statistical model identification, IEEE Trans. Automat. Control. 19: 716 - 723, 1974.
1977年
On entropy maximization principle, in Applications of Statistics, Krishnaiah, P. R. ed., North-Holland Publishing Company, 27-41, 1977.

プロフィールは受賞時のものです

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