Hiroo Kanamori
第23回(2007)受賞
地球科学・宇宙科学
/ 地球物理学者
1936 -
カリフォルニア工科大学名誉教授
巨大地震の地震波記録からその全過程を明らかにする解析手法を考案し、巨大地震の解明に画期的前進をもたらし、地震学に新時代を開くなど、地球科学の発展に大きな影響を与えるとともに、このような研究から得られた知見を地震災害軽減のために役立てる方法を提唱し、実践している。
金森博雄博士は、巨大地震の地震波記録からその全過程を明らかにする解析手法を考案し、巨大地震の解明に画期的前進をもたらし、地震学に新時代を開くなど、地球科学の発展に大きな影響を与えるとともに、このような研究から得られた知見を地震災害軽減のために役立てる方法を提唱し、実践している。
1960年代に博士は、地球全体を揺する巨大地震の研究を始め、環太平洋の巨大地震の発生機構を次々に明らかにし、ほとんど独力で「巨大地震学」とも言うべき分野を創始した。これらの研究を通して、誕生間もないプレートテクトニクス理論に大きく貢献するとともに、新しい地震の尺度「モーメント・マグニチュード」を考案した。その有用性は、2004年12月のスマトラ・アンダマン地震について、殆どの観測機関がこの尺度で報告していることからも明かである。博士は巨大地震の研究を発展させ、多様な破壊過程を一般的に説明する「アスペリティ・モデル」を提唱した。このモデルの妥当性は、アスペリティ周辺の非地震性滑りがGPS観測網によって検出され、実証されつつある。また、多様な個々の地震現象をこれらの理論から明らかにした。これらの発見は、地球科学の広い分野に大きな影響を与え続けている。博士は、長周期地震波の即時解析に基づく津波警報システムの提案、高層ビルや石油タンクなど巨大構造物の長周期地震波との共振についての指摘、「リアルタイム地震学」の提唱などを通して、破壊過程に関する知見を地震災害軽減へ活用する研究にも大きな貢献をした。大地震発生後に迅速にデータを収集・解析し、地震波到達直前の強振動予測に活用するリアルタイム地震学の実践システムはすでに南カリフォルニア地区で運用されている。こうした試みは、日本をはじめ他国でも始まりつつあり、博士が提唱した地震災害軽減の試みがまさに実を結ぼうとしている。
博士は、地震の全過程を明らかにする現代的な地震学を創出し、地震現象の多様性を示すことにより、地球科学の諸分野に大きな影響を与えただけでなく、地震災害軽減への取り組みを通して人類の幸福にも多大な貢献をしている。
以上の理由によって、金森博雄博士に基礎科学部門における第23回(2007)京都賞を贈呈する。
プロフィールは受賞時のものです