George William Gray
第11回(1995)受賞
材料科学
/ 化学者
1926 - 2013
ハル大学 名誉教授
現代情報化社会において、きわめて重要な役割を果たしている液晶表示素子である液晶材料の研究開発に根幹的寄与をし、液晶材料科学の基礎を創り、その体系化を行うとともに、応用における実用上の分子設計法を確立した。
ジョージ・ウィリアム・グレイ博士は、今日の情報化社会に極めて重要な役割を果たしている液晶表示素子である液晶材料の研究を行い、それらを実証的に体系化するとともに、実用上の分子設計法を確立し、液晶材料の開発に根幹的寄与をなした。
液晶材料は、周知のように、省エネルギー型の表示素子としてデジタル電卓、パソコン、液晶テレビなど数限りなく多方面に使用されており、現代社会において不可欠の材料となっている。
液晶状態は液体の流動性と固体の異方性を併せ持った、気体、液体、固体に次ぐ第4の物質状態であり、古く1888年に発見された。
グレイ博士の液晶ならびに液晶材料に関する研究は、1951年ハル大学の講師の時代から始まっている。その研究は当初は液晶分子の基礎的研究、特にその合成ならびに性質を体系化し、分子構造と物性の基礎を明らかにする研究であった。
その後、液晶を電場で制御することにより、表示デバイスに応用できることが考えられたが、グレイ博士は1972年化学的に安定で転移温度が低く、室温で作動可能なシアノビフェニル系液晶材料の開発に成功し、液晶のディスプレイへの実用化を可能とした。
以後20年以上を経た現在も、この一連の化合物が、標準的液晶化合物として広く利用されている。また博士は、今日最も汎用されているネマティック型液晶材料の基本的分子構造を明らかにしたが、この業績は基本的には現在もまだ越えられていないと言えよう。その後も応用面でのさまざまなニーズに対して、それまで蓄積してきた基礎的研究の知識に立って応えてきており、グレイ博士によって液晶材料の今日の成功がもたらされたと言える。
このようにグレイ博士は、液晶分子の合成と物性という基礎研究から出発し、液晶デバイスに使用できる液晶化合物の合成に成功するとともに、安定性、耐久性など材料にとって不可欠な分子設計にも大きく貢献をして、液晶を耐久性のある機能材料として広く世の中に認知せしめた。その功績は絶大であり、博士なくして今日の液晶デバイスの隆盛はなかったであろう。
グレイ博士はまた、液晶に関する数多くの論文と、液晶に関する定本といえる著書数冊を発刊し、若い液晶研究者に大きな影響を与えるなど、第11回京都賞先端技術部門材料科学分野の受賞者に最も相応しいと言える。
プロフィールは受賞時のものです