George H. Heilmeier
第21回(2005)受賞
エレクトロニクス
/ 電子工学技術者
1936 - 2014
テルコーディア・テクノロジーズ社 名誉会長
「壁掛けテレビ」の実現がまだ遠い夢であった1960年代に、液晶の持つ特異な性質を利用して平面型表示装置を実現することに挑み、今日あらゆる場面で利用されている液晶ディスプレイの原型となる平面型表示装置を世界で初めて試作し、現在の平面型表示装置の飛躍的な技術発展に先駆的な貢献をした。
ハイルマイヤー博士は、「壁掛けテレビ」の実現が遠い夢であった1960年代に、液晶の特異な性質を利用して平面型表示装置を実現することに挑み、今日あらゆる場面で利用されている液晶ディスプレイの原型となる平面型表示装置を世界で初めて試作し、現在の平面型表示装置の飛躍的な技術発展に先駆的な貢献をした。
エレクトロニクス機器では、画像や文字の表示機能が不可欠である。ブラウン管は表示装置として長く使われてきたが、平面型や携帯型の表示装置には不向きであった。米国RCA社では、平面型表示装置の実現に液晶を用いることを検討し、ウィリアムズ博士が電気光学効果などの液晶の性質を研究していた。
RCA社のハイルマイヤー博士は、分子配向によって内部電場を大きく制御できる液晶の性質に興味をもち、デバイス応用に強い関心をもって研究グループに参画した。そして、1964年に染料をドープしたネマティック液晶において、電圧印加により色の変化が起こる現象を発見した。この発見が液晶表示装置実現への足がかりとなり、博士はその後、液晶表示装置を実現するための要素技術を次々と開発した。そして、ある種のネマティック液晶において、液晶自体が電界印加によって透明状態から白濁状態に変化する「動的散乱効果」と呼ばれる現象を発見し、その利用により平面型表示装置をついに実現した。この動的散乱効果では液晶自体が白濁し光を散乱するため、簡単な構造で表示装置を作製できた。さらに、この効果は数十ミリ秒程度の高速性をも示しており、作製された表示装置は実時間表示をも視野に入れるものとなっていた。1968年にRCA社は、博士らが試作した様々な平面型表示利用装置を、世界初の液晶表示装置として発表した。この発表は、電機各社や研究機関の強い関心を呼び、本格的な研究開発競争を巻き起こした。そして、その後、制御性の高いツイステッド・ネマティック(TN)方式やより安定した液晶材料の開発などの成果が相次ぎ、また、製造各社による素子構造の改良や生産技術の開発努力があり、今日の液晶表示装置の本格的な実用化に繋がった。
現在の液晶表示装置の普及は、携帯電話からカラーテレビに及び、極めて広範である。ハイルマイヤー博士による液晶表示装置実現への先駆的貢献は、このような表示装置の革命的変化の大きなきっかけとなったものであり、その波及効果は非常に大きく、技術進歩の歴史に残るものであり、極めて高く評価される。
以上の理由によって、ジョージ・H・ハイルマイヤー博士に先端技術部門における第21回(2005)京都賞を贈呈する。
プロフィールは受賞時のものです