Donald Ervin Knuth
第12回(1996)受賞
情報科学
/ コンピュータ科学者
1938 -
スタンフォード大学 教授
アルゴリズムの解析、プログラミング言語の設計、情報処理技術の開発などにより、計算機・情報科学の基礎から応用に至る幅広い分野で大きな研究成果をあげるとともに、ソフトウェア科学を体系化しその基礎を創るなど、研究と教育を通じ、20世紀の情報科学の発展に多大な貢献をした。
ドナルド・アーヴィン・クヌース博士は計算機・情報科学の基礎から応用に至る幅広い分野で大きな研究成果を挙げるとともに、ソフトウェア科学を体系化しその基礎を創るなど、研究と教育を通じ、20世紀の情報科学の発展に多大な貢献をした。
クヌース博士は、コンピュータ処理に関する基本アルゴリズムを体系化するとともに、準数値アルゴリズムとしてコンピュータの内部演算と調和する数値計算の算法を確立し、コンピュータ・アルゴリズムの基礎を築いた。それらの内容を集大成した「コンピュータ・プログラミング技法」3巻は、世界的な情報科学の教科書あるいは事典であると同時に、アルゴリズムの本来的な意味と問題を深く洞察したバイブルでもあり、多様化する個別専用システムにおいて核となるアルゴリズムの確立を可能とし、ソフトウェア科学の研究および教育に大きく寄与した。また、コンピュータ・プログラムを文書として第三者が読み、利用できるべきであると提唱し、プログラミング言語とプログラムの文書化を一体とするシステムWEBを作成することにより実現した。その思想を「文芸的プログラミング」に発表され、情報科学全体に関わる影響をもたらしたことは、博士の優れた洞察力に負うものである。さらに、文書化技術の一つとしてコンピュータを用いて質の高い印刷物を作成する文書整形システムTEX、ならびに文字フォント設計システムMETAFONTを開発した。これによって、読みやすいプログラム出力を実現したばかりか、複雑な数式や論理式の印刷、引用文献の管理、文書構成を含めた文書作成の手法を確立するに至り、情報科学の領域に文書化技術という新たな分野を打ち立てることになった。現在、ヨーロッパ主要言語をはじめ、日本語、韓国語などの文書作成システムとして広く使用されるとともに、米国数学会を筆頭に多くの学会の掲載論文がTEXで作成されるようになるなど、博士の業績は単に情報科学分野のみに止まらず学術的、社会的にも大きな影響を及ぼしており、まさにグーテンベルグ以来の大発明といっても過言ではない。
以上のように、クヌース博士は1970年代、80年代における情報科学および産業の急速な発達を支える基盤を築く上で、確固たる指針と具体的実現技術を与え、今世紀の情報科学の基盤を築いた。よってクヌース博士に、先端技術部門の第12回京都賞を贈呈する。
プロフィールは受賞時のものです