Claude Elwood Shannon
第1回(1985)受賞
数理科学(純粋数学を含む)
/ 情報科学者
1916 - 2001
マサチューセッツ工科大学 教授
情報理論の創始者。1940年後半に、情報の量、信頼度、情報の交換や同値性などに関する諸問題を数学的に解析する理論を確立し、今日の通信技術の著しい発展の基礎を築いた。
今世紀においてもっとも著しい発展を遂げ、人間生活の広範囲にわたって重大な影響をおよぼした科学技術のひとつは通信技術である。情報と通信に関する諸課題は、今世紀を超えて将来ますます重大なものとなることが予想されている。
今日にいたる通信技術の発展に、数理科学的基盤を与えたのはクロード・エルウッド・シャノン教授である。1948年に発表されたシャノン教授の論文“A mathematical theory of communication”によって、情報理論と呼ばれる新しい数学が誕生した。それ以前は情報の諸問題を数理科学的に取り扱うことはほとんど不可能とされていたが、シャノン教授の理論によって情報伝達の科学性が浮彫りにされ、数学的取り扱いに対する希望が急速に拡大し、多数の工学者や数学者の関心を集め、情報科学の著しい発展が今日まで続いている。
シャノン教授は、まったく新しい数学の分野を創設し、研究開発の基本方針を明示しただけでなく、その分野においてもっとも重要な概念と技法を発見し、さらに現在の発展段階からみてももっとも基本的とみなせる定理を証明した。このような画期的な業績を果たした数理学者は、科学史を古く遡っても例が少ないといえる。
シャノン教授は、情報伝達の数学的構造を、次の五つの側面から分析した。
1.情報を発信する情報源の特性。通報の集合、各通報を構成する文字の集合、各通報の発生確率と発信出力など。
2.通報を信号として発送するときの符号化に関する諸問題。
3.信号を伝送する通信路の特性と通信を妨害する雑音の問題。
4.符号化された信号を通報に復元する問題。
5.情報を受信する側の特性。
シャノン教授は、このような情報伝達の基本模型をもとに、情報の量と信頼性、情報の変換と同値性などを支配する基本法則を定式化した。哲学的理論に留まらず、工学的直感にたよる手段でなく、数理科学の真髄に徹して、数量的定義づけと数理的解析に基づいた数学理論を構築した。
情報理論において、シャノン教授が定式化した概念、とくに情報エントロピーの概念は基本的であり、 シャノン教授の符号化処理は今日にいたるまでもっとも重要な成果とみなされている。
シャノン教授の情報に関する理論と思想は、その応用が通信工学においてめざましいものであったことはいうまでもないが、さらにコンピュータ科学、言語学、生物学、心理学など広範な数理科学に多大な影響を与えてきた。
プロフィールは受賞時のものです