Alan Curtis Kay

第20回(2004)受賞

先端技術部門

情報科学

アラン・カーティス・ケイ

/  コンピュータ科学者

1940 -

ビューポインツ・リサーチ・インスティテュート 代表

記念講演会

「なぜ?」と思う心

2004年

11 /11

会場:国立京都国際会館

ワークショップ

パーソナルコンピュータと教育の将来像

2004年

11 /12

13:00~17:10

会場:国立京都国際会館

業績ダイジェスト

現代のパーソナルコンピュータの概念の創出と実現への多大な貢献

計算機の大型化が主流であった1960年代後半、個人の知的作業を支援するための道具を創るという考えのもと、パーソナルコンピュータの概念を提案し、計算機のあり方にパラダイムシフトをもたらした。さらに、グラフィック・ユーザ・インターフェースやオブジェクト指向言語環境などの開発を先導し、今日のパーソナルコンピュータの実現に大きな貢献をした。

贈賞理由

ケイ博士は、コンピュータのあるべき姿はダイナミックなパーソナルメディアであるとのビジョンを持ち、今日社会のあらゆる場面で利用されているパーソナルコンピュータの原型を提案し、その実現に貢献してきた。

1960年代後半は、コンピュータはまだ専門家が用いる高価な機械であり、利用するにはプログラム言語の習得が必要であった。そして、いかに大型のコンピュータを作るか、という点に力が注がれていた。そのような時代にあって、ケイ博士は「個人の知的作業を支援するためのコンピュータを創る」というビジョンを持ち、それを「パーソナルコンピュータ」と呼んで開発研究に取り組んだ。そして1970年代初めには、パーソナルコンピュータの理想形を描いた「Dynabook」マシンを構想した。子供が自由に使え、持ち運びが可能で、無線によるネットワーク接続機能も装備する、というコンピュータのあるべき姿を提案したことは、コンピュータの在り方にパラダイム・シフトをもたらした。

ケイ博士は、自身の概念を具体的に実現するものとして、ゼロックス社パロアルト研究所で「Altoコンピュータ」の開発に、中心人物の1人として貢献した。Altoではさまざまな新技術が実装されたが、その1つに、現在標準的に利用されているグラフィック・ユーザ・インターフェースがある。ケイ博士はオーバーラッピングウィンドウなどのデザイン形成に携わった。一方で博士はソフトウェアとしてプログラミング開発環境「Smalltalk」の開発も先導した。オブジェクト指向を用いたプログラミングの成功は、後の計算機言語設計だけでなく、今日の複雑な情報システム開発のための方法論全般にも大きな影響を与えた。

博士は、教育へのコンピュータ利用の重要性を早期から認識し、子供、特に幼児に対するコンピュータ教育にも情熱を傾けてきた。現在、ソフトウェアの基本的な概念やシステムを作る際の発想法を子どもの発達段階をふまえて無理なく習得させ、情報化社会に対応できる人材を育成するプロジェクトを指導している。

ケイ博士は、30数年にわたり一貫して、コンピュータ開発者に夢を与え、コンピュータの利用分野に飛躍的な拡大を与え、今日の知的創作活動や社会・経済活動の基盤に大きな変革をもたらすことに多大な貢献をした。

以上の理由によって、アラン・カーティス・ケイ博士に先端技術部門における第20回(2004)京都賞を贈呈する。

プロフィール

略歴
1940年
マサチューセッツ州スプリングフィールド生まれ
1969年
ユタ大学 博士号(計算機科学)
1969年
スタンフォード大学 人工知能プロジェクト 研究助手・講師
1971年
ゼロックス パロアルト研究所 研究員、フェロー
1981年
アタリ社 チーフサイエンティスト
1984年
アップルコンピュータ社 フェロー
1996年
ウォルトディズニー社 研究開発担当副社長
2001年
ビューポインツ・リサーチ・インスティテュート 代表
2002年
ヒューレット・パッカード社 上級フェロー
2002年
IPA 探究ソフトウェアプロジェクト プログラムマネージャー
2004年
京都大学大学院 情報学研究科 客員教授
2004年
カリフォルニア大学ロサンゼルス校 計算科学学部 兼任教授
2004年
ウィスコンシン大学 情報工学部 上級研究者
主な受賞・栄誉
1987年
ソフトウェアシステム賞、ACM
1989年
ライフタイム アチーブメント賞、SPA
1990年
ヴァルニエル情報賞
1992年
最優秀教育者賞、ACM SIGCSE
2001年
コンピューティング分野における最優秀功労者賞、IMAS
2001年
C&C賞、NEC
2003年
チューリング賞、ACM
2004年
ドレイパー賞、米国工学アカデミー
会員
英国王立芸術協会、米国工学アカデミー
主な論文
1977年
Personal dynamic media, IEEE Computer, March, 31 (with Adele Goldberg), 1977.
1984年
Computer Software, Scientific American, 251, 41, 1984.
1990年
User interface: A personal view, in The Art of Human-Computer Interface Design, ed. (Brenda Laurel, Addison-Wesley) 191, 1990.
1996年
The early history of smalltalk, in ACM History of programming languages II, (Addison-Wesley), 1996.
1997年
Back to the future: the story of squeak-a usable smalltalk written in itself, OOPSLA 1997 : 318 (with D. Ingalls, T. Kaehler, J. Maloney, S. Wallace), 1997.

プロフィールは受賞時のものです