Akira Kurosawa

第10回(1994)受賞

思想・芸術部門

映画・演劇

黒澤 明

/  映画監督

1910 - 1998

記念講演会

私の映画観

1994年

11 /11

会場:国立京都国際会館

ワークショップ

黒澤明監督と映画を語る

1994年

11 /12

13:20~17:25

会場:国立京都国際会館

業績ダイジェスト

斬新な映像と鋭い洞察で人間性を探究し続け、世界に大きな影響を与えた映画監督

「羅生門」など長年にわたり多くの優れた作品を重ね、その鋭い人間洞察、きわめて人道的な主題、力強く斬新な表現などにより、観るものに深い感銘を与えてきた世界的に注目される映画監督である。

[受賞当時の部門: 精神科学・表現芸術部門]

贈賞理由

黒澤明氏は、半世紀にわたって優れた作品を発表し続け、その鋭い人間に対する洞察力、全作品に流れる確固たるヒューマニズム、力強く斬新な表現などによって、見るものに深い感銘を与えてきた、日本の世界的な映画監督である。

黒澤氏は、初め画家の道を歩み、非凡な才能を示したが、後に映画監督に転じた。

1943年の第一作以来、黒澤監督は、人生に対し力強く闘う人間を、好んで題材に取り上げてきた。代表作「生きる」「七人の侍」の主題は、いずれも、厳しい試練にさらされながら、正義感、使命感、死を恐れぬ勇気をもって、強く生きる精神の強さ、崇高さを鮮烈に表現した。また、「羅生門」は、日本映画が世界の注視をあびた、最初の記念すべき作品となった。その話法、事件の取り扱いの斬新さによって、世界の映画に大きな影響を与えた。黒澤氏は、素材を広く世界に求めたが、シェークスピアやドストエフスキー、アメリカのテレビドラマに至るまで、すべて日本的風土に移し替え、人間の本質を追求するドラマを創った。

黒澤氏の作品の特色は、また、その独創的な表現にある。「羅生門」の藪の中の炎暑や、「七人の侍」の豪雨の決闘場面など、その描写は、しばしば激しい表現をとり、それが主題と深く結びついて、劇的な効果を上げた。画家としての豊かな才能は、モンタージュ手法を効果的に用いる等、一作ごとに新しい造形美を生み出し、他の追随を許さぬ黒澤スタイルを確立した。

黒澤氏の作品が、国際映画祭で数多く受賞したことは、その高い国際的評価を裏付けるのである。それのみならず、作品にみなぎる力強い主題や豊かな表現は、世界の多くの映画作家を刺激し、その創作に大きな影響を与えたことは、注目に値する。

このように、高い芸術性を保持するとはいえ、何といっても、黒澤氏の作品の魅力は、あくまで映画の楽しさを堪能させたところにある。

黒澤氏は84歳の今日、なお第一線にあり、新しい境地を示す映画制作への情熱を保ち続けている。まさに20世紀の映画作家の頂点に立つ人であり、京都賞精神科学・表現芸術部門の受賞者として最も相応しい。

プロフィール

略歴
1910年
東京に生まれる
1928年
京華中学校卒業
1936年
PCL撮影所(東宝の前身)に入社、演出助手
1939年
山本嘉次郎監督「馬」でB班監督を務める
1943年
監督昇進、第1作「姿三四郎」
1959年
黒澤プロダクションを設立
1985年
第1回東京国際映画祭オープニングで「乱」上映
1990年
カンヌ国際映画祭オープニングで「夢」上映
主な受賞・栄誉
1951年
「羅生門」ベネチア国際映画祭 グランプリ
1952年
「生きる」ベルリン国際映画祭 銀熊賞
1954年
「七人の侍」ベネチア国際映画祭 銀獅子賞
1974年
「デルス・ウザーラ」モスクワ国際映画祭 グランプリ
1980年
「影武者」カンヌ国際映画祭 グランプリ
1984年
レジオン・ドヌール勲章
1985年
文化勲章
1990年
米国映画アカデミー特別栄誉賞
主な作品
1946年
「わが青春に悔いなし」
1951年
「白痴」
1958年
「隠し砦の三悪人」
1965年
「赤ひげ」
1985年
「乱」
1993年
「まあだだよ」

プロフィールは受賞時のものです

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