André Weil
第10回(1994)受賞
数理科学(純粋数学を含む)
/ 数学者
1906 - 1998
プリンストン高等研究所 名誉教授
数論・代数幾何学を含む広範な領域での数々の先駆的研究によってきわめて顕著な研究成果をあげ、20世紀における最大級の巨星として、現代数理科学の飛躍的発展に大きく貢献した。
[受賞当時の対象分野: 数理科学]
アンドレ・ヴェイユ博士は、数学の広範な領域で先駆的研究を行い、極めて顕著な研究成果をあげ、純粋数学の今世紀における飛躍的発展の過程で、最も広く大きく貢献した偉大な数学者である。
博士自身の業績は多岐にわたって顕著である。博士は、数学の多分野にまたがる関連性や、特定分野を超越した類似の延長などにおいて、斬新な予想と発想を提示した。それらの中には、後々に実の多い研究を発足させた例も多い。特に、数論と幾何学の関係については、ヴェイユ博士の卓越した洞察力と独創的な着想が基盤となって、領域間にみごとな相互関連性が次々と発見され、解明された。
1940年代に博士は、交点理論の抽象化を柱とした抽象代数幾何学の基礎づけを完成し、数論と代数幾何学を融合させた研究の基盤を確立した。さらに、純代数的にアーベル多様体の理論を建設することに成功し、代数曲線やアーベル多様体の合同ゼータ関数に対するリーマン予想を解決し、非常に顕著な業績をあげた。そして博士は、1949年に、合同ゼータ関数の問題を高次元の代数多様体の場合に拡張して、精密な予想を提唱した。このヴェイユ予想は、単純な一般化ではなく、抽象的な代数多様体の位相に対する博士の深い洞察から生まれた定式化であり、その後の代数幾何全体の飛躍的発展において重要な指導原理となった。
ヴェイユ博士は、代数群に関する数論の確立、保型表現に関する研究の基礎づけ、数体上の代数多様体のゼータ関数(ハッセー・ヴェイユ関数と呼称される)の大域的研究など、数論の視点に立って、保型関数と代数幾何との結合を目指す研究を進め、数論の発展に大いに貢献した。また、位相群に対する調和解析、特性類の研究、ケーラー幾何学の基礎づけ、テータ関数の幾何学的研究など、幾何学の発展にも大きく貢献した。
ヴェイユ博士の数学的思想は純粋であり、普遍的である。その影響は数学の多数の分野に及んでいる。関数解析学、多変数関数論、位相幾何学、微分幾何学、複素多様体論、リー群論、数論、代数幾何学などの分野の研究者たちに博士が与えた思想的影響は測り知れないほど広大である。
ヴェイユ博士は第10回京都賞基礎科学部門の受賞者として最も相応しい。
プロフィールは受賞時のものです