Nikolaus Harnoncourt
第21回(2005)受賞
音楽
/ 音楽家
1929 - 2016
厳密な時代考証に基づき、作曲当時の響きを追求し、音楽文化の復権を目指して活躍する演奏家であり、古い時代の作品の解釈に新しい風を吹き込み続けている演奏家である。そして、モダンのオーケストラにも古楽器の音楽の奏法を応用し、膨大な数のレパートリーでエネルギーに満ちた音楽を作り出している。
ニコラウス・アーノンクール氏は、厳密な時代考証に基づき、作曲当時の響きを追求し、音楽文化の復権を目指して活躍する音楽家であり、古い時代の作品の解釈に新しい風を吹き込み続けている演奏家である。
ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者として活動を始めたアーノンクール氏は、作曲された時代の楽器を復元して用いるだけではなく、オリジナルのスコアや演奏法・演奏習慣・当時の音楽観まで含めた背景を忠実に辿り、音楽にこめられたメッセージを現代に蘇らせる演奏活動を続けている。作曲された時代から時が推移するに従って、単なる響きの美しさや華やかな技巧を追求する音楽演奏がもてはやされるようになったことを憂慮し、かつて生きた「言語」として機能していた音楽に対し、その文化的な地位を復権させることを目的として一貫して指揮活動を行っている。
アーノンクール氏は、ウィーン交響楽団のチェロ奏者を務める傍ら、古楽、古楽器の研究に力を注ぎ、1953年には、アリス夫人と共に古楽器によって演奏を行うウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(CMW)を結成した。CMWは、ルネサンスやバロック期のアンサンブル作品から、古典派、ロマン派へとレパートリーを広げ、声楽を含め、膨大で多彩な録音を行った。1971年からレオンハルトと分担して行ったバッハのカンタータの全曲録音は、1960年代の冒頭から開始された古楽器運動のもっとも大きな成果の一つである。この他にも、1970年代半ばに演出家ポネルと組んだモンテヴェルディのオペラ三部作、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団と取り組んだモーツァルトやハイドンの一連の管弦楽作品の演奏も代表作である。
1980年代以降は、ウィーン・フィル、ベルリン・フィル、ヨーロッパ室内管弦楽団との緊密な活動を通じ、モダン・オーケストラに古楽器の奏法を応用し、エネルギーに満ちた音楽を作り出して指揮者としての高い評価を得た。そこでは、時代考証に基づく演奏のみならず、自らの音楽的想像力の作用を重視して演奏を行っている。演奏活動の他にも、ザルツブルク・モーツァルテウム大学で講義や著作活動、及びグラーツのシュティルアルテ音楽祭の主宰など、氏の活動は多方面にわたる。
以上のようにアーノンクール氏は、音楽の理論と実践、歴史と現在を広い視点から捉え、人間にとって音楽の領域を広大なものに開拓してきた音楽家である。
よって、ニコラウス・アーノンクール氏に思想・芸術部門における第21回(2005)京都賞を贈呈する。
プロフィールは受賞時のものです