Pina Bausch

第23回(2007)受賞

思想・芸術部門

映画・演劇

ピナ・バウシュ

/  振付家・演出家

1940 - 2009

記念講演会

私を突き動かすもの

2007年

11 /11

会場:国立京都国際会館

ワークショップ

舞踊演劇の世界―語りかける身体

2007年

11 /12

13:00~16:30

会場:国立京都国際会館

業績ダイジェスト

舞踊と演劇の境界線を打破し、舞台芸術の新たな方向性を示した振付家

人間の動きの根源的な動機を追及した独自の振付法で、演者と観客双方の感性に肉迫する独創的な作風を確立すると同時に舞踊と演劇の境界線を打破し、舞台芸術に新たな方向性を与えた。

贈賞理由

ピナ・バウシュ氏は、人間の動きの根源的な動機を追及した独自の振付法で、演者と観客双方の感性に肉迫する独創的な作風を確立すると同時に、舞踊と演劇の境界線を打破し、舞台芸術に新たな方向性を与えた振付・演出家である。

1973年以来ヴッパタール舞踊演劇団の芸術監督として、世界的な活動を続けているバウシュ氏は、その初期、ドイツ表現主義舞踊の、社会と個人の現実を追及するスタイルを継承しつつ、モダンダンスの新しい身体・舞台表現を融合していった。この時期の代表作、1975年の『春の祭典』で彼女は、「豊穣を願うため犠牲として選ばれた女性が死に至るまで踊り続ける」というストラヴィンスキーのコンセプトを忠実に再現し、全体と個人、残虐性と麻痺、陶酔と恐怖などのテーマを鮮烈に描き出してみせた。

更にバウシュ氏は、人間の内面から沸き上がって肉体を突き動かす力を追求し、動きの意味や理由を重視する独自の演劇的手法を確立した。1976年以降の『カフェ・ミュラー』、『コンタクトホーフ』等に観られるように、作品には言葉、歌、日常の仕草さえもが意味を持つ動きとして取り入れられている。土や水、植物や動物など、自然の産物を大胆に取り入れた舞台美術とも相まって、バウシュ氏は舞踊演劇の創始者として広く認知されるに至った。1986年ローマに滞在して創作した『ヴィクトール』を皮切りに、バウシュ氏は様々な国の都市で「国際共同制作」を開始し、異なる文化、価値観などとの接触を作品に反映させ続けている。

バウシュ氏の作品の主なテーマは、孤独や疎外、男女間の葛藤、個人と社会の対立、自然と人間の関係などであり、それらは現代に生きる人々の普遍的かつ切実な問題に他ならない。ダンサーたちとの1ヶ月にもわたる綿密な対話から作り上げられる作品は、見る者の記憶や感性を直接に刺激し、従来の舞踊作品とは別格といえるほどの激しい反応を引き起こす。既成の世界観は崩壊し、観客は新たな現実と真実の認識を迫られるのである。舞踊と演劇の境界線を打破したバウシュ氏は、舞踊に、社会と時代を映し出すメディアとしての新たな可能性を示し、更にその結果、舞踊のみならず、舞台芸術全般に新たな活力を与えた。

以上の理由によって、ピナ・バウシュ氏に思想・芸術部門における第23回(2007)京都賞を贈呈する。

プロフィール

略歴
1940年
ドイツ・ゾーリンゲン市に生まれる
1955年
エッセン市フォルクバンク・シューレに入学し、クルト・ヨースのもとで舞踊を学ぶ
1959年
DAAD(ドイツ学術交流会)の奨学生としてニューヨーク・ジュリアード音楽院ダンスコースに留学。その傍らアントニー・チューダーの指揮するメトロポリタン・オペラのダンサーを務める
1962年
ヨースが結成したフォルクバンク・バレエに入団のため帰国
1969年
「Im Wind der Zeit」がケルン・国際振付コンクールで1位入賞
1973年
ヴッパタール舞踊団の芸術監督・振付家に就任
1983年
フォルクヴァンク大学舞踊学科長
1983年
フォルクヴァンク・タンツシュテューディオ芸術監督
主な受賞・栄誉
1990年
国際演劇協会(ITI)ドイツ・センター賞
1991年
芸術文学功労賞(フランス)、ダンス功労賞(イタリア)
1993年
UNESCOピカソ賞
1998年
ハリー・エドモンズ賞(アメリカ)
1999年
ヨーロッパ演劇賞(欧州)、高松宮殿下記念世界文化賞
2006年
ローレンス・オリヴィエ賞(イギリス)
主な作品
1968年
フラグメント(初振付作品)
1975年
春の祭典
1976年
七つの大罪/怖がらないで
1978年
カフェ・ミュラー コンタクトホーフ
1982年
カーネーション
1985年
ヴェニス・フェニーチェ劇場がピナ・バウシュのフェスティバルを開催し、10作品をイタリアの聴衆に紹介する
1986年
ヴィクトール
1993年
船と共に
1994年
ヴッパタール舞踊団20周年記念公演、13作品が上演される
1997年
フェンスタープッツァー
2003年
ネフェス
2006年
フォルモント

プロフィールは受賞時のものです

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