Pierre Boulez
第25回(2009)受賞
音楽
/ 作曲家・指揮者
1925 - 2016
フランス国立音響音楽研究所(IRCAM)名誉所長
作曲家として、セリー音楽の推進から電子音響技術の活用まで、常に革新的な作品を通じて現代音楽界に大きな足跡を残すとともに、指揮・著述・組織運営にわたる広範な活動を展開。そのいずれにおいても刺激的な創造性に富んだ多大な影響力を発揮して、第二次大戦後の西洋音楽界をリードし続けてきた。
ピエール・ブーレーズ氏は、第二次世界大戦後の西洋音楽界をリードしてきた代表的な音楽家である。作曲・指揮・著述・組織運営と広範に渡る活動のどれもが、刺激的な創造性に富み、多大な影響力を発揮し時代を動かしてきた。
1925年フランス生まれのブーレーズ氏は、新しい様式であるセリー音楽を理論的にも実践的にも推し進め、「セリー音楽の最大の作曲家」として作曲界に大きな足跡を残した。1950年代の《ル・マルトー・サン・メートル》などの作品は、直接師事したメシアン、レイボヴィッツ等の方法論の展開のみならず、20世紀前半にドビュッシー、ヴェーベルン、ストラヴィンスキーなどが切り開いた代表的な潮流を深く結びつけるものであった。
さらに1960年代には「管理された偶然性」を採り入れた《プリ・スロン・プリ》等の作品を通してその後の進路を示唆した。またこの間、著述家としても刺激的で示唆に富む文章を発表した。さらに指揮者としてはドメーヌ・ミュジカルを組織して指導し、緻密さと明晰さを兼ね備えた演奏で20世紀音楽のレパートリーを開拓した。指揮のレパートリーは1960年代後半以降、古典派からロマン派、そしてバイロイト音楽祭でのヴァーグナー上演、パリ・オペラ座でのベルク《ルル》3幕版初演といったオペラにまで及び、画期的な演奏が行われた。その解釈は、今日の模範となっている。
1970年代には、パリのポンピドゥー・センター附属の研究施設 IRCAM の所長となり、コンピュータを用いた音響のリアルタイム変換の開発をソフト、ハードの両面で推進し、コンピュータ音楽の展開上で先進的な役割を担った。ブーレーズ氏自身も大規模な作品《レポン》でこの技術を駆使して、創作界に刺激を与え、同時にアンサンブル・アンテルコンタンポランを創設して指導した。また、ミシェル・フーコーの推挙でコレージュ・ド・フランスの教授に就任し、フランス思想界の代表者たちと渡り合った。
ブーレーズ氏は80歳代半ばの今日も、世界のトップ・オーケストラを指揮しての精力的な録音や演奏活動を続けている。のみならず次代の音楽文化のために、若い世代の音楽家たちを対象にした現代音楽講習会をルツェルン音楽祭で毎年行っている。
以上の理由によって、ピエール・ブーレーズ氏に思想・芸術部門における第25回(2009)京都賞を贈呈する。
プロフィールは受賞時のものです