László Lovász
第26回(2010)受賞
数理科学(純粋数学を含む)
/ 数学者
1948 -
エトヴェシュ・ロラーンド大学 教授
離散構造に関する先端的な研究を行うことによって、アルゴリズムの観点からさまざまな数学分野を結びつけ、離散数学、組合せ最適化、理論計算機科学などを中心とする数理科学の広い範囲に影響を与え、学術的側面と技術的側面の両面において、数理科学の持つ可能性を拡大することに多大な貢献をした。
ラースロー・ロヴァース博士は、離散構造に関する先端的な研究を行うことによって、アルゴリズムの観点から様々な数学分野を結びつけ、学術的側面と技術的側面の両方において、数理科学の持つ可能性を拡大することに多大な貢献をした。個々の具体的研究成果はグラフの性質の解明あるいはグラフに関するアルゴリズムの設計という形で述べられたものが多いが、そこに示された方法論はグラフ理論の枠を超えた数理科学としての意義を有し、離散数学、組合せ最適化、理論計算機科学などを中心とする数理科学の広い範囲に影響を与えた。
ロヴァース博士の初期の代表的な業績である1972年のパーフェクトグラフ(弱)定理は、グラフ理論における著名な未解決問題を肯定的に解決したものであるが、線形不等式系による離散構造の表現というパラダイムの一頂点としての意義を有する。1979年のシャノン容量に関する成果は、情報理論における著名な未解決問題を解決したものであるが、そこで導入された2次形式による離散構造の表現は、のちに最適化分野の中心的トピックの一つとなった半正定値計画法の嚆矢となった。さらに、これらの二つの先駆的業績を発展させる形で、楕円体法によるアルゴリズム設計の幾何学的方法論の展開においてその一翼を担った。これにより、劣モジュラ関数最小化などの未解決問題が解決しただけでなく、計算理論と最適化理論の新たな関係が拓かれた。さらに、ロヴァース博士の局所補題などを通して、離散構造の解析に確率的手法を取り入れる枠組みを示すとともに、確率的検査可能証明の提案にも貢献した。また、マトロイドマッチングのアルゴリズムや、暗号理論を展開する際の基礎的道具の一つとなっている整数格子の基底簡略化アルゴリズム(いわゆるLLLアルゴリズム)などの構築に寄与している。
このように、ロヴァース博士は、アルゴリズム理論とその周辺諸分野を双方向的に往来することによって、両者の発展に寄与するとともに、計算による構成を切り口とした分野横断的な数理科学を推進した。
以上の理由によって、ラースロー・ロヴァース博士に基礎科学部門における第26回(2010)京都賞を贈呈する。
プロフィールは受賞時のものです