John Neumeier

第31回(2015)受賞

思想・芸術部門

映画・演劇

ジョン・ノイマイヤー

/  振付家

1939 -

ハンブルク·バレエ団 総裁·芸術監督

記念講演会

ダンス—感情に生きたかたちを与える

2015年

11 /11

会場:国立京都国際会館

業績ダイジェスト

20世紀バレエの流れを刷新し、今世紀もなお世界の舞踊界を牽引し続ける振付家

伝統的なバレエの動きをベースとしながら、身体の持つ表現力を最大限に引き出し、人間心理を巧みに表現した振付によって舞踊界をリードし続けている。20 世紀以降のバレエ史において 2 つに分かれて発展してきた劇的バレエと抽象バレエの本質を統合し、舞踊という芸術を一段の高みへと引き上げた。

贈賞理由

ジョン・ノイマイヤー氏は、伝統的なバレエの動きをベースにしながら身体の持つ表現力を最大限に引き出し、それによって人間心理を深く探求している振付家である。

1942年にアメリカに生まれたノイマイヤー氏は文学を修めるかたわら舞踊を学び、1963年にドイツのシュツットガルト・バレエ団に入団した。演劇的バレエの主要な発信地であった同団で早くから創作の気風に触れ、才能を開花させる。1973年にはハンブルク・バレエ団の芸術監督に就任、以来40年以上にわたり多幕物の新作を精力的に発表し、バレエ界をリードし続けている。

氏の作品群は、大きく3つに分けられる。すなわち、『幻想―「白鳥の湖」のように』に代表される「古典バレエの現代的な読み直し」、『椿姫』をはじめとする「文学のバレエ化」、『マーラー交響曲第3番』他の「名作音楽を用いた抽象作品」である。身体の離れ業を内面表現へと転化させ、元になる物語や音楽の本質的な味わいを引き出す氏の手腕は比類が無く、劇中劇をはじめとする計算され尽くした演出手法や卓抜な照明術が示す通り、その創作へのアプローチは極めて知的である。一方で、男女の愛、登場人物への共感、人類愛と、様々なレベルで熱い感情が作品の底流をなしてもおり、それがまた、氏の作品を各国の一流バレエ団やダンサーがレパートリーに熱望してやまない理由でもある。日本文化にも関心が深く、東京バレエ団に委嘱された『月に寄せる七つの俳句』や『時節の色』では、日本的繊細さや叙情性と、それを取り巻く折々の季節感の変化をみごとに表現している。

20世紀以降のバレエは、19世紀のロマン主義的な妖精譚とは一線を画すリアルな人間造形を中心に据えた「身体の演劇」と、楽曲に緊密に対応した「観る音楽」の2つに分かれて発展してきたが、「身体の動きによる精神の表出」という舞踊ならではの営みに対しきわめて自覚的なノイマイヤー氏は、長年にわたる活動の過程でしだいに両者の本質を統合し、バレエという芸術全体を一段の高みへと引き上げたというべきだろう。その作品を踊ることでダンサーが成長し、その名演が観客を含めたバレエ界全体を成熟させるだけでなく、次世代の振付家に対しても、創作の出発点としての深い思索を促さずにはおかない。今後もノイマイヤー氏の影響力は多大であるに違いない。

以上の理由によって、ジョン・ノイマイヤー氏に思想・芸術部門における第31回(2015)京都賞を贈呈する。

プロフィール

略歴
1942年
米国ウィスコンシン州ミルウォーキー生まれ
1961年
米国マーケット大学卒業(英文学・演劇学専攻)
1962年
英国ロイヤル・バレエ学校に学ぶ
1963年
シュツットガルト·バレエ団にてダンサー·振付家として活動
1969年
フランクフルト·バレエ団 監督
1973年
ハンブルク·バレエ団 芸術監督·主席振付家
1978年
ハンブルク·バレエ学校を創立
1996年
ハンブルク·バレエ団 総裁
2006年
ジョン·ノイマイヤー財団を設立
2011年
ナショナル·ユース·バレエ(ドイツ)を立ち上げる
主な受賞・栄誉
1983年
ダンス·マガジン賞
1988年
ドイツ舞踊賞、ディアギレフ賞
2006年
ニジンスキー賞
2007年
ヘルベルト·フォン·カラヤン音楽賞
2008年
ドイツ舞踊賞
主な作品
1971年
『ロミオとジュリエット』 『くるみ割り人形』
1975年
『マーラー交響曲第3番』
1976年
『幻想 —「白鳥の湖」のように』
1978年
『椿姫』 『眠れる森の美女』
1985年
『オテロ』
1989年
『月に寄せる七つの俳句』
1995年
『オデュッセイア』
2000年
『ニジンスキー』 『時節ときの色』
2005年
『人魚姫』
2011年
『リリオム』
2014年
『タチヤーナ』

プロフィールは受賞時のものです

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